ねりせん経営相談室Vol.1 事業承継(3)
事業承継について
(親族内・親族外)
ねりま中小企業経営支援センター
中小企業診断士 森 彦明
前回は、事業承継のうち、M&Aについてお話しさせていただきました。今回は、事業承継におけるもう一つの選択肢、親族内および親族外(従業員等)への事業承継についてのお話となります。かくいう私も実家の事業を承継中です。株式譲渡、退職金の受取り・支払いなど課題は盛りだくさんです。そんな私の実体験も踏まえてお話しできればと思います。事業承継の意思決定までには時間が掛かりますが、下記の図表の通り、「事業承継の意思を伝えられてから経営者に就任するまでの期間」が3年以内の場合は、親族内承継のケースで40%超、社内役員・従業員からの昇格のケースでは70%超というアンケートもあります(いずれも赤枠内)。決めるまでは長い一方で、決まってからは早いことが特徴とも言えます。事業承継をお考えの場合、また廃業を選択なさる前に、将来を見据えて是非ご一考ください。
出所:事業承継ガイドライン(第3版)より、筆者再編
事業承継の種類とメリット・デメリット
出所:中小企業基盤整備機構
事業承継の種類としては、Ⅰ親族内承継、Ⅱ親族外承継(従業員等)があります。それぞれに対して、上記の図表の通りメリット・デメリットや留意点があります。
例えば、Ⅰ親族内承継の<メリット>「一般的に社内外の関係者から心情的に受け入れられやすい」点に関して、敢えて私自身は気を付けました。金融機関への会社の口座名義変更の際も、私は親族へ金融機関への同行や事前の連絡をお願いしました。金融機関へも現経営者から次期経営者を直接紹介してもらう場を設けること(顔の見える化)で、自社の今後の事業承継の理解をいただき、何かあった際には迅速に相談できるように丁寧な信頼関係の構築を意識しました。
また、Ⅱ親族外承継の<デメリット>「後継者候補に株式取得等の資金力がない場合」は、親族外承継の場合のみではありません。親族内承継の場合も、個人債務保証の引き継ぎで問題がないのか、株式承継の方法、先代経営者への退職金の支払いなど相続なども絡み資金面も一朝一夕では解決できません。現状の資金繰りの把握もしなければならず、決定には時間を要する場合もあり、これらの時間も考慮しておく必要があります。
一方、これらの問題・課題の解決に対して、いくつかの公的の施策や支援先もあります。
事業承継にまつわる支援制度や相談先の利用
事業承継には様々なパターンがあり、その承継の状況を考慮した「事業承継税制」や、事業承継を支援してもらえる制度やスキームがあります。以下は、その支援制度・支援先の一例となります。
Ø「事業承継・引継ぎ補助金」 経営革新事業の経営者交代型(Ⅱ型)廃業・再チャレンジ事業や、経営資源引継ぎ(M&A)の実施を見据えた専門家活用事業などです。(令和6年3月以降公募要領が変わる可能性があります)
Ø「事業承継・引継ぎ支援センター」 各制度のご利用以前にお困りの場合の相談先として、各都道府県にあります。
また、練馬区に根差した中小企業診断士が集まる「ねりま中小企業経営支援センター」でもご相談を受け付けております。お気軽にご相談ください。
【筆者プロフィール】